レッスンに来る人のこと、どれくらい知っていますか? そして、その情報をどれだけ活かせていますか?
私はデビューしたての頃から、年間 200 人以上の人を対象にレッスンをしていました。そのときはヨガの知識をみにつけ、レッスンを間違えないようにするのに必死でした。
しかしこのままではまずいと思い、先輩講師や日本中のヨガインストラクター仲間に話を聞いたり、ワークショップや養成講座でレッスンの質を高める方法について勉強しました。
そのなかでも、ヨガの知識や技術が少なくても、「誰でも、今すぐ」に活用できる手法をお伝えします。
とは言っても、もうすでにタイトルでネタバレしていますが(笑)
生徒管理リスト
名前 | (重要) |
お仕事 | |
趣味 | |
怪我歴 | (重要) |
苦手な体の使い方 | |
持病 | (重要) |
職業病 | |
疲れやすい部分 |
このリストをそのままコピーしてもいいですし、手書きでノートや手帳にまとめてもOKです。慣れると紙に頼らなくても覚えることができますが、書く事で記憶の定着もするので最初はぜひ利用してください。
上から名前やお仕事、体の問題に関する項目を用意しています。特に重要だと思う部分は、生徒さんが初めてレッスンに参加したときに聞くようにしましょう。
仕事や趣味は聞かれたくない人もいますから、仲良くなってからで大丈夫です。
なぜ、詳しく知る必要があるのか
多数の人を対象とするグループレッスンの場合、怪我歴の偏りや現在の体の悩みを知っておくと危険をあらかじめ回避できます。
例えば、「肩を脱臼する癖を持っている人が多いから、このポーズはやめよう」とか「手首を怪我している人が来ることがあるから、代替ポーズを用意しよう」とか「瞑想で長時間座っていると腰痛で辛いという人がいたから、ボルスターかヨガブロックを用意してみよう」といったことができます。
その日によっても人の体の調子は変わりますから、「今日は背中の調子どうですか?」とか「最近、後屈が深くなりましたけど腰の具合いいんですか?」といった会話のきっかけにもなりますよね?
私が実際に指導していて思ったのは、誰でもひとつくらいは体に不具合を抱えていて、それをかばいながらヨガを練習しているということ。そのことをヨガインストラクター側が知っておけば、生徒さんも安心してレッスンを受けられます。
管理リストを使うと信頼関係が深ままる
先ほどお伝えしたように、管理リストを元に生徒さんについて知っておくと、生徒さんから信頼を得るようになります。
私自身が自分の先生のレッスンを受けるとき、先生が他の生徒さんに「Tさん、最近肩の様子どう?」とか「旦那さんと最近どうですか?」といった会話をしているのを見かけました。
その先生は管理リストを作成しているわけではなく、頭の中に情報を自然にインプットしている人なのですが、生徒さんに興味関心を深くもっているのだなと感動しました。
私もそれに近づけるように努力し、ノートに管理リストを作ってからというもの、生徒さんとの距離感がグッと縮まりました。
なにより、生徒さん一人一人に深い関心を持てるようになっていました。
注意点がいくつかあります
活用すれば「誰でも、今すぐ」役立つリストではあるのですが、いくつか注意点があります。
◎根掘り葉掘り聞く必要はない
生徒さんによっては先生と話をするのが苦手な人もいます。また、プライベートなことを忘れたくて訪れる人もいます。当然、話したくないこともあります。
なので、最低限聞いておきたい名前と怪我や体の不調について知っておけば大丈夫です。そこから先のことは、生徒さんが心を開いてから徐々に聞ければいいですし、それ以上を求めない人なら、そっとしておいてあげるのが親切です。
◎はじめは顔と名前だけでも十分
なにより、全部を聞いて覚えようとすると先生の負担も大きくなります。1回しか来ない人だっているわけですから、全ての情報を詰め込もうとするとパンクしかねません。
名前と顔さえ覚えておけば、後からノートにいくらでも書き足すことができます。レッスンが終わったら「今日はこんな人が来たな」とノートに軽くまとめる程度にとどめましょう。
◎怪我や持病には要注意
例えば生徒さんから「腰が痛いんです」と言われたとします。一口に腰が痛いといっても、前屈したら痛むのか、ねじったら痛いのか、それとも後屈したら痛いのか。まったく違いますよね? できるだけ具体的に、どのようにしたらそれが痛いのか、どんなポーズなら大丈夫そうで、どんなポーズならおやすみしたほうがいいのかを考えてあげましょう。
体の問題は医者に任せましょう。わからないのに安易なことを答えるのはプロとして責任ですからね。
ちなみに「旦那と喧嘩が多くて」といったセリフに置き換えても同じです。家庭問題という怪我ですから、安易な対応は出来ません。
家事を手伝ってくれないから喧嘩しているのか、いってきますのキスがないから喧嘩したのか、それは当事者によく聞かないとわかりません。ここでお説教のように「こうしましょう」といった提案は避けたほうが無難ですし、ヨガインストラクターの領分を超えているように思えます。
体の怪我なら医者に。家庭の怪我ならカウンセラーに。ヨガの問題なら我々ヨガインストラクターが答えるのが正しいのではないでしょうか?
ちなみに、ヨガをしていくなかで体や家庭での問題に関わる障害が徐々に癒されていくことがあります。
ニューヨーク在住のヨガ指導者J・ブラウンがいうには「私たちが生まれつき持っている生命の治癒力を自然な状態に戻すプロセスがヨガ」です。
直接的なアドバイスはできなくても、ヨガを通じてその人の人生になにか潤いを与えるのが、私たちの仕事だと思います。